reporter:: 新妻孔太

第一回は12月18日。テーマは「原発事故前後での心境の変化」。集まったのは4人。東京都出身のイリノさん、千葉県出身のメグミさん、そして福島県浪江町出身のユキコさん、福島県楢葉町出身のコウタ(リポーター)。

まずは震災当日の状況から話は始まりました。
メグミさんの家は浦安市。液状化の被害が大きかった地区です。この話がきっかけとなって話題が膨らみます。

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メグミ
震災の翌日に地震の被害、津波の映像は見ていました。でも福島第一原発のことは頭に入ってきませんでした。原発は自分にとって遠い存在だったのと、10日間水が使えないという目の前の生活で精一杯。
ライフラインが整わない中、突然計画停電が始まりました。水も電気も(地区によっては)ガスもない厳しい状況でした。
そんな中『東京から逃げた方がいい』と言われて始めて原発の状況を理解しました。そこからいろいろ調べ始めたという感じです。
しばらくして放射能は怖いものだと意識し始めました。それまでは本当に何も知らなかったです。

液状化のニュースを見た人達の中には『家が傾いてるんでしょ?』とおもしろ半分で言う人もいました。そういう人って震災は他人事なのだと思います。
自分たちとはかけ離れている。
原発の事も他人事だと思っている人が多いと思います。

コウタ
『興味がない』ことって普通の反応なのかも知れませんね。
僕の周りのでも『福島行って被曝してこい』とか冗談で言い合って笑っている人がいました。僕が警戒区域出身というのを知らない人達です。
原発事故に対してあまり実感がわいていないのだと思います。

ユキコ
周りでそんな会話がされていてショックを受けない?
それを聞いたときはどうするの?

コウタ
ショックは受けます。
でもその場ではどうしていいか分からないです。とりあえずその場から離れる様にしていました。
言葉で説明しても当事者の気持ちって正確には伝わらないですよね。
不用意に福島の話をして気を使われるのもいい気はしないですし。

メグミ
私も事故以前は原発に関心はありませんでした。
東京の電気が福島や他の県から来ている事さえ知らなかったです。

イリノ
東京はそういう人が多い。そういう事にあまり感心が無い。知識として何となく知っていても考える事はない。

メグミ
電気がどこから来るかなんて全然考えないし、水が出ることと同じように当たり前のこと過ぎるんです。

イリノ
そうだと思う。僕もそうでした。

ユキコ
私たちはいつも冗談まじりで「都会のためにここで電気を作っている」とか「福島はこの電気使えないのにな〜」というような話をしていました。


メグミ
そうなんですね!

事故があってから初めて、電気を地方からもらっている事を知りました。
でも友人にその話をしても反応が薄いです。東京に住む子にとっては興味が無いのが普通なのかも知れません。それぞれ程度の違いはあるとは思いますけど。何も知らない人は大勢います。もっと知らなくちゃいけないと思います。

イリノ
東京では地方から電気が送られている事は教育もされないからね。自分で感心を持たないと知る事は出来ない。発電所がある場所は知っているけれど、どんな仕組みでどこに電気が送られてくるかは全く知らなかった。

コウタ
なるほど。でもメグミさん、イリノさんの様に考え方が変わった人もいるのですね!

ユキコ
知られていないという事は残念だけど、意識が変わった方がいるのはうれしいよね。どこから電気が来ているのか知ってもらえただけでも救われる。

メグミ
福島の人は原発についてどう教わりますか?

コウタ
なぜか分からないけど、小さい頃から自然に知っています。
授業の時間で教わることは無いと思います。
広野火力発電所には社会科見学で行きました。他の機会に、原発の敷地にも入ったと思います。
直接原子炉の中を見る訳じゃないですけど。地元にとってはあって当然の物だし安全なはずだったから。普通の工場と一緒の感覚だと思います。

ユキコ
そうそう。私は道徳の時間に教わったような気がします。
大熊町の原子力センターに行ったりもしました。小学生くらいの頃だったと思うけど。
今思えば『安全だよ』ってすり込みだったように思える。

メグミ
子供達は原発で働きたいって思うようになるのですか?

コウタ
そういう訳じゃないけど地元で就職するなら候補になります。安定した給料がきちんともらえます。個人で事業を始めるより楽だと思います。

ユキコ
やりたいことが東京にあるという子は地元から出て行っちゃいます。私たち(ユキコとコウタ)は上京組。
上京した子はあまり地元に戻らないよね。

地元の人は『原発が危ない』ことは何となく分かっている。でも、雇用が少ないから『しょうがない』って感じだった。

イリノ
原発の危険性にしても慣れちゃんだろうね。
そこにたくさん人が集まってくれば経済も動くし。

ユキコ
原発に関係している建設業もたくさんある。
地元では東電の一次下請け、何次下請けかがステータスになっていてすごく驚いた。昨年開かれた同窓会で話しをしていたら、想像以上に生活に根付いていたみたい。

イリノ
しょっちゅうトラブルがあった事も本を読んで始めて知ったよ。
前福島県知事の佐藤栄佐久さんの本を読んだら詳しく書いてあって驚いた。

コウタ
それも知らないのですね。
放射線を含んだ水蒸気が漏れた言う事は時々ありました。
地元のニュースでは取り上げられます。

ユキコ
佐藤栄佐久さんは原発でトラブルがあると、運転を止めるなどの対処をしていました。
福島にいたところ、トラブルで、よく原発が止まっていた印象があります。
何だかんだ言って、原発って効率が悪い。トラブルの対応も命がけだし、本当に大変だと思う。
雇用問題もあって難しいけれど、地元から反対意見を言える勇気があれば・・・。
田舎で反対意見を言う事ってなかなか難しいよね。
選挙では、原発の政策で選ぶのも多くなかったように思う。

イリノ
反対意見の立候補者がでるってことはないの?
そういう人が当選することはない?

ユキコ
出馬するけれどだいたい落ちちゃう。
反原発運動をしても、実際の政治で反原発は出来ないのかも。
反対意見は抑止力として必要なくらいで。

メグミ
家族に一人でも原発関係者がいたらNoとは言えないよね。それは家族を否定する事にもなってしまうと思うし難しいと思う。

コウタ
東京では原発の話を政策として出す人はいましたか?

イリノ
知っている限りでは、いないと思う。電気とか反原発を問題にして立候補する人なんてこれまでいたのかな。環境問題などの一環でエコなエネルギーとして原発について触れられる事はあったけれど。
京都議定書でCO2が問題になって原発推進をしていた事を知ったことだけど、今回の事故を境に急に変わってしまった。

コウタ
東京の人は原発に問題がある状況がわかったことで、改めて考えようとはしているのですか?
周りの人と意見交換をする事は有りますか?

メグミ
温度差があるように思います。知ろうとしているひとはほとんどいない。節電のときも原発の心配をしている訳ではなく、自分たちが電気を使えるかどうかの心配をしています。目の前にある電気については考えが及ぶけれどその背景の原発を考える事は難しいのかな。

原発の話をしようとしても、同調される事はあまり無いです。周りの人が原発問題に興味を持ってくれて話が出来たら良いけれど、押し付ける事は出来ないです。

ユキコ
私の東京の友人はしっかり話を聞いてくれる人が多かった。
でも、残念ながら、考え方の違いで疎遠になった人もいます。

『中途半端な意見は言えない』という理由で何も言わない人もいます。
だけど、首都圏の人にも関係のあることだから、どんな意見でも話をした方がいい。
みんな意見をもっとはっきり言ってもいいと思う。日本人だから控えめなのかな。

メグミ
関心が無いから意見がないのだと思います。
考えているのであればYesかNoだと思う。
福島のお二人は原発について考えてもらいたい時どう話しますか?

コウタ
僕は自分からはあまり切り出せない。
原発事故に感心があると分かる人から『実家の状況どうなの』って聞かれれば話します。
はまず自分の意見を聞いてもらい、相手の意見を聞きます。

ユキコ
私は自分の出身地を切り出して反応を見てみます。
それで感心をもってくれているかはだいたい分かります。
「原発は危ない」と認識してくれているだけでもいいと思う。

イリノ
見捨てられてしまう意識もある?

コウタ
その意識はあります。一年経たないのにニュースでも取り上げられなくなったし、節電という流行で終わってしまうという不安がある。

イリノ
野田首相の冷温停止宣言以前に『事故は収束している』
と思っている人もいるよ。
街の雰囲気を見ると切実な問題と感じていない。
怖いよね。まだまだ何があるか分からないのに。

ユキコ
世の中では『マスコミで取り上げられない=終わっている』と思っている。
原発事故は現在進行形のままなのに。

イリノ
これからは廃棄物についても国民全員が考えなければ行けないよね。
危機感を感じている人が発信ないと忘れられてしまうと思う。

ユキコ
東京の人にもまだまだ忘れないでいてほしいね。

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意見を聞くうちに福島と東京の間の意識の違いが見えてきました。
東京の人は『原発について』だけではなく『電気がどこで作られているか』に目を向ける機会も少なかったようです。

その中で福島第一原発の事故をきっかけに原発のあり方に目を向けてくれる方がいる事がわかりました。

震災・原発事故から時間が経ち報道が少なくなった現在、『原発の状況について触れる機会』や『主張を発信する機会』を作っていくことが必要だと感じます。

なんだか平和になった様に感じますが安心して暮らすにはまだまだ時間がかかります。多くの人が原発やエネルギーの事について自分なりの答えを出してもらいたいと思います。


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reporter
新妻孔太(福島県楢葉町出身/デザイナー/ディレクター/絵描き)

東海大学で建築を先攻。環境計画研究所勤務。空間をつかったコミュニケーションのディレクションやデザインを担当。Blog [ http://d.hatena.ne.jp/KOnta/ ]

現在のイラスト制作テーマ
Sense of Wonder--描いていて気持ち良いものをそのままに描く!
Thankyu Fukushima--故郷福島へ送る作品